Dynamic CTによる膵癌の1例
- ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
- 効能又は効果、用法及び用量、警告、禁忌等を含む使用上の注意につきましては、添付文書をご参照ください。
Title
はじめに
症例背景
80歳代、男性、53kg、進行膵癌
検査目的
膵体部癌の病期診断目的。
使用造影剤
イオプロミド300注シリンジ / 100mL
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症例解説
糖尿病にて近医にて定期受診されていたが、体重の減少と耐糖能異常の増悪を認めた。腹部超音波検査にて、膵腫瘍と肝腫瘍が疑われ当院を受診された。造影CT検査にて、膵体部癌と転移性肝腫瘍が疑われ、超音波内視鏡下膵腫瘍生検にて腺癌が検出され、膵体部癌(浸潤性膵管癌)および多発肝転移と診断された。
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画像所見
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撮影プロトコル
使用機器 | CT機種 | Revolution CT / GE Healthcare |
---|---|---|
CT検出器の列数/スライス数 | 256 | |
ワークステーション | ー |
撮影条件 | 撮影時相 | 単純 | 後期動脈相 | 門脈相 | 平衡相 |
---|---|---|---|---|---|
管電圧 (kV) | 120 | 120 | 120 | 120 | |
AEC | NI : 10.0 | NI : 9.0 | NI : 9.0 | NI : 9.0 | |
(AECの設定) | ー | ー | ー | ー | |
ビーム幅 | 80mm | 80mm | 80mm | 80mm | |
撮影スライス厚 (mm) | 0.625 | 0.625 | 0.625 | 0.625 | |
焦点サイズ | Large | Large | Large | Large | |
スキャンモード | Helical | Helical | Helical | Helical | |
スキャン速度 (sec/rot) | 0.5 | 0.5 | 0.5 | 0.5 | |
ピッチ(mm) | 0.992:1 | 0.992:1 | 0.992:1 | 0.992:1 | |
スキャン範囲 | 上腹部 | 上腹部 | 上腹部 | 胸部から骨盤 | |
撮影時間 (sec) | 2.1 | 2.1 | 2.1 | 4.7 | |
撮影方向 | 頭⇒足 | 頭⇒足 | 頭⇒足 | 頭⇒足 |
再構成 条件 |
単純 | 後期動脈相 | 門脈相 | 平衡相 | |
---|---|---|---|---|---|
ルーチン:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm) | 5 / 5 | 5 / 5 | 5 / 5 | 5 / 5 | |
ルーチン:再構成関数/逐次近似応用法 | Stnd / ASiR-V 40% | Stnd / ASiR-V 30% | Stnd / ASiR-V 30% | Stnd / ASiR-V 30% | |
3D/MPR用:再構成スライス厚/間隔 (mm/mm) | 1.25 / 1.25 | 1.25 / 1.25 | 1.25 / 1.25 | 1.25 / 1.25 | |
3D/MPR用:再構成関数/逐次近似応用法 | Stnd / TFI H | Stnd / TFI H | Stnd / TFI H | Stnd / TFI H |
造影条件 | 単純 | 後期動脈相 | 門脈相 | 平衡相 | |
---|---|---|---|---|---|
自動注入器機種名/メーカー名 | Dual shot Gx 7 / 根本杏林堂 | ||||
使用造影剤 | イオプロミド300注シリンジ | ||||
造影剤:投与量 | ー | 600mgI/kg | ー | ー | |
造影剤:注入速度、注入時間 | ー | 注入時間 : 30sec | ー | ー | |
生食:投与量 | ー | ー | ー | ー | |
生食:注入速度、注入時間 | ー | ー | ー | ー | |
スキャンタイミング | ー | 固定法 | ー | ー | |
ディレイタイム | ー | 45sec | 22sec | 108sec | |
留置針サイズ (G) | 20G | ||||
注入圧リミット (kg/cm2) | 12kg/cm2 |
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当該疾患の診断における造影CTの役割
膵癌(膵管癌)は乏血性腫瘍であり、造影早期での膵実質との増強効果の違いにより腫瘍を描出することができる。また、dynamic studyでは漸増性の造影パターンを呈することが知られており、造影パターンから他の膵腫瘍との鑑別を行える。症状が軽微で発見される膵癌はサイズが小さいことが多く、薄いスライス厚で撮像と再構成を行わないと同定が困難な場合がある。
造影dynamic CTでは腫瘍の検出に加えて,周囲との関係を詳細に知ることができ、周囲臓器への浸潤の有無を評価することができる。特に血管系については、dynamic studyの動脈相や門脈相により、動脈系や門脈、静脈系の血管解剖の把握や脈管浸潤の評価を行うことができる(1)。
周囲臓器や血管浸潤の評価から、病期診断や手術適応についての評価ができ、治療法の決定における重要な役割を担っている。
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CT技術や撮像プロトコル設定について
Revolution CTは、256列のWide coverage area detectorであり、さらに最速0.28秒のローテーションタイムを有している。また近年本機に、深層学習による画像再構成法Deep learning image reconstruction(DLIR)が実装された。DLIRは、高線量のFiltered back projection(FBP)画像を教師画像とし、あらかじめ学習させたDeep neural network(DNN)を通じて、臨床データの画像再構成を行なっている(2)。
撮像時のヨード造影剤の選択,投与方法については,膵癌は乏血性腫瘍であるため、動脈相での膵の増強効果をあげることにより、膵癌部を低吸収域として明瞭に描出するように設定する.それには,高ヨード濃度造影剤を使用する,あるいは時間比ヨード量を増加させるために造影剤注入速度を高く設定し、良好な検出能を得ることができる。
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参考文献
- Elbanna KY, Jang HJ, Kim TK. Imaging diagnosis and staging of pancreatic ductal adenocarcinoma: a comprehensive review. Insights Imaging. 2020 Apr 25;11(1):58.
- McCollough CH, et al. Use of artificial intelligence in computed tomography dose optimization. Annals of the ICRP. 2020;49(1_sup-pl):113-125.
使用上の注意【添付文書より抜粋】
1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(11)高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
5.高齢者への投与
本剤は主として、腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多いため、高い血中濃度が持続するおそれがあるので、患者の状態を観察しながら使用量を必要最小限にするなど慎重に投与すること。