末期腎不全患者に対する造影剤減量下のTAVI術前CTの1例
- ご紹介する症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
- 効能又は効果、用法及び用量、警告、禁忌等を含む使用上の注意につきましては、添付文書をご参照ください。
Title
はじめに
患者背景
70歳代、男性、58kg、大動脈弁狭窄症
検査目的
TAVI術前精査目的に心臓大血管CT施行
使用造影剤
イオパミロン注300シリンジ
Title
症例解説
他院にて悪性リンパ腫化学療法の前検査にて重度の大動脈弁狭窄症を指摘された。血清クレアチニン5.36mg/dl、eGFR9.0mL/min/1.73m2と著明な腎機能障害を認めた。(*)
造影剤減量下(39mL)でTAVIプラニングのCT施行したが冠動脈含め十分な術前評価可能であった。TAVI施行し、透析導入となることなく退院となった。
* イオパミロン注は、「重篤な腎障害(無尿等)」のある患者には「原則禁忌」であるため投与しないことが原則であるが、特に必要とする場合には慎重に投与すること。
Title
画像所見
Perimeter/-derived diameter
76.5mm/24.3mm
Area/-derived diameter
483mm2/24.8mm
Maximum/minimum diameter
26.9mm/21.5mm
Title
撮影プロトコル
使用機器 |
CT機種 |
Revolution CT / GE |
---|---|---|
ワークステーション |
Vincent / 富士フイルムメディカル |
撮影条件 |
撮影時相 |
単純(カルシウムスコア) |
動脈相 |
大動脈 動脈相 |
---|---|---|---|---|
管電圧 (kV) |
120 | 100 | 80-140(デュアルエナジー) | |
AEC |
25 | 25 | 14 | |
ビーム幅(mm) |
160 | 160 | 80 | |
撮影スライス厚 (mm) |
0.625 | 0.625 | 0.625 | |
焦点サイズ |
XL | L | L | |
スキャンモード |
Cardiac | Cardiac | Helical | |
スキャン速度 (sec/rot) |
0.35 | 0.28 | 0.5 | |
ピッチ |
ー | ー | 0.992 | |
スキャン範囲 |
気管分岐部から心臓全体 | 気管分岐部から心臓全体 | 胸部から骨盤 | |
撮影時間 (sec) |
0.4 | 1.7 | 4.3 | |
撮影方向 |
固定 | 固定 | 頭⇒足 |
再構成 条件 |
単純(カルシウムスコア) |
動脈相 |
大動脈 動脈相 |
|
---|---|---|---|---|
ルーチン:再構成スライ |
0.625/0.625 | 0.625/0.625 | 0.625/0.625 | |
ルーチン:再構成関数/ |
HDstandard/ASIR V 60% | HDstandard/ASIR V 60% | HDstandard/ASIR V 60% | |
3D/MPR用:再構成スラ |
ー | 0.625/0.625 | 0.625/0.626 | |
3D/MPR用:再構成関数 |
ー | HDstandard/ASIR V 60% | HDstandard/ASIR V 100% |
造影条件 |
単純(カルシウムスコア) |
動脈相 |
大動脈 動脈相 |
|
---|---|---|---|---|
自動注入器機種名/メーカー名 |
Dual Shot GX7 / 根本杏林堂 | |||
使用造影剤 |
イオパミロン注300 シリンジ | |||
造影剤:投与量 |
ー | 39mL | ー | |
造影剤:注入速度、注入時間 |
ー | (造影剤25mL+生理食塩液12mL)10sec | ||
生食:投与量 |
ー | 42mL | ー | |
生食:注入速度、注入時間 |
ー | (造影剤14mL+生理食塩液30mL)13sec | ||
スキャンタイミング |
ー | BT法(バルサルバ洞、150HU) | ー | |
ディレイタイム |
ー | 8.4sec | 12.2sec | |
留置針サイズ (G) |
ー | 20G | ー | |
注入圧リミット (psi or kg/cm2) |
ー | 13kg/cm2 | ー |
Title
撮影プロトコルについての解説
TAVI術前評価のCT撮影は、1回の造影注入によって冠動脈と大動脈弁及び大血管の評価を行っている。
当症例に対する工夫
患者のeGFRが9.0mL/min/1.73m2で著明な腎機能障害を認めた為、造影剤を通常の60%使用した(通常時は320mgI/kg)。心臓撮影時の管電圧はCT値の増強効果を得る事と弁の石灰化のアーチファクトを考慮し、100kVpとし、大動脈はDual energyを用いて撮影する事とした。装置の特性上、心臓の撮影モードからDual energy に切り替わるのに12.2sDelay timeが必要な為、造影剤の注入時間を長くする必要性があった。造影効果の低下を防ぐ為、造影剤を生理食塩液との混合注入とし、心臓撮影時(造影剤6+生理食塩液4)、大動脈撮影時(造影剤4+生理食塩液6)の比率割合でそれぞれ注入時間を10sと13sとした。大動脈のVR画像は50keVを使用し、ノイズの影響を抑えるため、ASIR Vは100%を使用した。